化膿性股関節炎
化膿性股関節炎とは
化膿性股関節炎は、細菌感染によって引き起こされる股関節の重篤な炎症性疾患です。主に乳幼児に発症しやすく、迅速な診断と治療が必要とされる緊急性の高い病態です。適切な治療が遅れると、成長軟骨の損傷や骨頭壊死などの深刻な後遺症を引き起こす可能性があります。
化膿性股関節炎の症状
主な症状には以下のようなものがあります。
- 激しい股関節痛や大腿部痛
- 高熱(多くの場合38℃以上)
- 全身倦怠感
- 股関節の腫脹と熱感
- 特徴的な肢位:股関節が屈曲、外転、外旋位をとる
- 仮性麻痺:痛みのため自発的に下肢を動かさない状態
- 歩行不能や立位困難
症状の重症度は年齢によって異なり、年齢が低いほど関節機能の低下リスクが高くなる傾向があります。
化膿性股関節炎の原因
主な原因は以下の通りです。
血行性感染
他の部位(扁桃腺など)の感染巣から血流を介して細菌が股関節に到達
外傷性感染
開放性骨折や手術後の感染
周囲組織からの直接波及
最も一般的な起因菌は黄色ブドウ球菌ですが、年齢や患者の背景によって他の細菌が原因となることもあります。
化膿性股関節炎の治療方法
治療の主な目的は、迅速な感染制御と後遺症の予防です。治療方針は以下の通りです。
緊急手術
- 関節切開排膿術:関節内の膿を排出し、洗浄
- 関節鏡視下手術:低侵襲な方法として近年増加
抗菌薬治療
- 初期は広域スペクトラムの抗菌薬を点滴投与
- 培養結果に基づき、適切な抗菌薬に変更
- 通常6週間程度の投与(点滴から経口薬へ移行)
安静と固定
- 初期は牽引療法や固定具を用いて関節を安静に保つ
リハビリテーション
- 炎症が落ち着いた後、段階的に関節可動域訓練や筋力強化を開始
早期診断と適切な治療が予後を大きく左右します。発熱と股関節痛を伴う乳幼児の場合、本疾患を疑い、速やかに診察を受けることが重要です。また、治療後も定期的なフォローアップが必要で、成長に伴う二次的な変形や機能障害の有無を慎重に評価していく必要があります。