単純性股関節炎
単純性股関節炎とは
単純性股関節炎は、主に小児期に突然発症する股関節の炎症性疾患です。一過性滑膜炎とも呼ばれ、比較的短期間で自然軽快する特徴があります。通常、2歳から12歳の間に発症し、平均的には5歳前後に多く見られます。男児の発症率が女児の2~3倍高いことが知られています。
単純性股関節炎の症状
主な症状には以下のようなものがあります。
- 急激な股関節痛の出現
- 歩行困難や跛行(はこう)
- 下肢痛(股関節から膝、時には足首まで)
- 微熱(38℃未満のことが多い)
- 股関節の可動域制限
特徴的なのは、症状の突然の出現です。幼児の場合、痛みを言葉で表現できないため、オムツ交換や着替えの際に泣くなどの行動変化として現れることがあります。また、呼吸器感染症状が先行することもあります。
単純性股関節炎の原因
単純性股関節炎の正確な原因は明らかになっていませんが、以下のような要因が関与していると考えられています。
- ウイルス感染:上気道感染などに続発することがある
- 軽微な外傷
- アレルギー反応
しかし、多くの場合で明確な原因を特定することは困難です。この疾患は「除外診断」によって診断されることが多く、他の重篤な疾患(化膿性関節炎など)を除外した上で診断されます。
単純性股関節炎の治療方法
単純性股関節炎は通常、自然経過で改善する良性の疾患です。
主な治療方針は以下の通りです。
- 安静:股関節への負担を軽減
- 経過観察:症状の推移を慎重に見守る
- 対症療法:
- 消炎鎮痛剤の使用(必要に応じて)
- 牽引療法:症状が強い場合に入院して実施する場合もあります
多くの場合、数日から2週間程度で症状は軽快します。
ただし、以下の点に注意が必要です。
- 再発の可能性:数回の再発を繰り返すこともある
- 他疾患との鑑別:化膿性関節炎などの重篤な疾患との鑑別が重要
- 経過観察の重要性:症状が遷延する場合は再評価が必要
単純性股関節炎は基本的に予後良好な疾患ですが、適切な診断と経過観察が重要です。症状が持続したり、発熱が高熱になったりする場合は、速やかに医療機関を受診することがお勧めです。