股関節唇損傷
股関節唇損傷とは
股関節唇損傷は、股関節を構成する寛骨臼(かんこつきゅう)の縁を取り巻く軟骨組織(関節唇)が損傷する状態を指します。関節唇は股関節の安定性を高め、関節液を保持し、衝撃を吸収する重要な役割を果たしています。この損傷は、軽度の摩耗から完全な断裂まで、様々な程度で発生する可能性があります。
股関節唇損傷の症状
主な症状には以下のようなものがあります。
- 股関節、鼠径部、または臀部の痛み(特に歩行や走行時)
- 夜間や長時間の座位後の痛み
- 股関節のこわばりや可動域制限
- 関節の引っかかり感やクリック音
- 不安定感や脱力感
症状の程度は個人差が大きく、無症状で経過する場合もあります。
股関節唇損傷の原因
主な原因として以下が挙げられます。
- 大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI):骨の形状異常により、関節唇が挟まれて損傷する
- 反復的な過度の使用:スポーツ活動(特にバレエ、ゴルフ、サッカー、アイスホッケーなど)や特定の職業による繰り返しの動作
- 外傷:転倒や事故、高衝撃のスポーツ損傷
- 解剖学的要因:股関節形成不全や骨の異常な形状
- 加齢による変性:時間の経過とともに関節唇が摩耗する
- 変形性関節症:関節軟骨の変性が関節唇にも影響を与える
股関節唇損傷の治療方法
治療方針は症状の程度、患者の年齢、活動レベルなどに応じて様々です。
保存療法
- 活動修正:損傷を悪化させる動作の回避
- 薬物療法:消炎鎮痛剤の使用
- 物理療法:ストレッチングや筋力強化
- 注射療法:ステロイドや麻酔薬の関節内注射
手術療法
主に関節鏡視下手術が行われ、以下の処置が含まれます。
- 関節唇の修復(縫合)
- 損傷部分の切除(部分切除)
- 骨形成(FAIがある場合)
リハビリテーション
手術後や保存療法の一環として、以下のようなプログラムが実施されます。
- 関節可動域訓練
- 筋力強化エクササイズ
- バランストレーニング
- スポーツ特異的な動作の再教育
早期診断と適切な治療により、多くの患者で症状の改善と機能の回復が期待できます。ただし、変形性関節症を伴う場合や重度の損傷では、長期的な経過観察や追加の治療が必要となることがあります。また、再発予防のための継続的なケアと生活習慣の改善も重要です。